公正取引委員会も注視する芸能事務所・ライバー事務所VS所属タレントの熾烈な独立バトル

公正取引委員会は2025年12月9日、ライブ配信プラットフォーム「Pococha」(ポコチャ)における取引額が上位のライバー事務所4社(株式会社AEGIS GROUP、株式会社Colors、株式会社321及び株式会社WASABI)に対し、合理的な理由が認められないにもかかわらず、契約終了後もライブ配信活動を禁止したり他のライバー事務所との間でマネジメント契約を締結することを禁止したりしていたことについて、独占禁止法に違反するおそれがあるとして注意を行った。

また、さかのぼること9月30日には「実演家等と芸能事務所、放送事業者等及びレコード会社との取引の適正化に関する指針」を公表し、契約期間を明確に十分説明することや、原則として、契約上、競業避止義務等を規定しないこととする指針を示した。

公正取引委員会が所属契約に関して立て続けに指針を公表した背景には、エンタメ業界において、タレント(ライバー)を育成あるいはプロモーションした投資費用をできるだけ回収しなければならない所属事務所と、デビュー後ようやく芽が出てきて自由に活動したいタレントとの間において、弁護士交渉から裁判に至る熾烈(しれつ)な移籍・独立バトルが行われている事情がある。

タレント側のやめたい事情~隣の芝生は青く見える

エンタメ業界の所属契約書には、契約終了後も一定の競業禁止が設けられることも多い。

事務所としては、多額の育成費をかけているのだから、すぐに辞められては困るし、一方で、あまり長い契約期間を設けると有望な新人が入ってくれない。

タレントとしては、ある程度売れたら好きに活動したいし、業界内で聞こえてくる割のいい条件の事務所に移籍したいと思ってくる。隣の芝生は青く見えるというわけだ。

そうこうして契約期間満了まで活動しても、競業禁止があるのでは移籍も活動もできない、という状況になる。

判例上、不当に長期の競業禁止は無効になる可能性があるが、タレントが時間と費用をかけて裁判をして競業禁止の無効を勝ち取ることは実際には非常に困難だ。

現実的には、弁護士を立てるなどして交渉を行い、双方合意の上で解約する必要があるため、この点を公正取引委員会は公正な競争を阻害する状況と見ているのだ。

事務所側の懐事情

この手の話は、事務所側がタレントに一方的に重い制約を課しているように思われがちだが、実際はそうでもない。

芸能事務所は儲かっているところばかりではないし、余裕があっても、見込んだタレントのスキルアップのためのレッスンを手配したり、マネジャーをつけてスケジュール調整をしたり、多くの資本を投下してマネジメントしている。時には、SNS炎上対応や、私生活のクレーマー対応、警察対応まで行う。これに加えて、タレントが不祥事を起こしたり、一方的に活動を放棄したりして事務所側が困るケースも多い。

事務所としては、タレントから「辞めます」と言われて、「そうですか。わかりました」と直ちに言えない事情があるのだ。

こうして、事務所とタレントの独立バトルは終わることなく続いていく。

文/竹村公利 内外タイムス

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