天皇はなぜ「天照大神の子孫」とされるのか 神話が支える皇統の原点
近年、天照大神という名前が学術・文化の領域でも話題になっている。たとえば、日本の国石として知られるヒスイの中から新鉱物「アマテラス石」が発見され、その名前が天照大神にちなんで命名された。これは東京大学や京都大学などの研究チームによる発見であり、国際鉱物学連合にも認められた新種の鉱物である。科学的な発見に神話の名前が冠されることで、日本文化の伝統や神話が現代に息づいていることが感じられる。
また、皇室ゆかりの出来事として、秋篠宮家の長男・悠仁さまが成年式の報告のため伊勢神宮を参拝し、天照大神に拝礼される様子がニュースになった。伊勢神宮は天照大神を祀る日本で最も格式の高い神社のひとつであり、こうした参拝が伝統として重んじられていることも話題となっている。
日本神話の中で最も重要な存在のひとつが「天照大神(あまてらすおおみかみ)」である。太陽神であり、古代から日本の人々にとって中心的な神として信仰されてきた。特に天皇との関係は、日本の歴史と文化を語るうえで欠かせないテーマである。
天皇は、『古事記』や『日本書紀』といった、いわゆる記紀神話の記述に基づき、天照大神の直系の子孫とされている。この考え方は単なる物語ではなく、日本の皇位の神聖性や正統性の根拠として長く受け継がれてきた。
神話での系譜を簡単に整理すると、次のようになる。
1.天照大神(あまてらすおおみかみ)
太陽の女神であり、神々の世界・高天原を治める存在として描かれている。
2.瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)
天照大神の孫として高天原から地上へと降臨した。ここで重要なのが、「三種の神器」を授かり、天孫降臨という神話が成立する点である。この時、天照大神は「天壌無窮の神勅(てんじょうむきゅうのしんちょく)」という言葉を伝えたとされる。これは「この国は永遠にお前たちの子孫が治めるべきである」という趣旨の命令である。
3.神武天皇(じんむてんのう)
瓊瓊杵尊のひ孫にあたる人物で、日本の初代天皇とされている。伝説では紀元前660年に橿原宮(現在の奈良県)で即位したとされ、この時点から万世一系の皇統が始まったとされる。
天照大神から神武天皇へ、そして歴代の天皇へとつながる系譜は、「万世一系(ばんせいいっけい)」という言葉に象徴される。これは「途切れることなく同じ血統が続いてきた」という意味であり、日本の皇室が長らく持ってきた自認の根拠である。
伊勢神宮の内宮は、天照大神を祀る最も重要な神社として知られている。ここは単なる観光地というだけでなく、天皇家との深いつながりが現代でも強く意識される場所である。皇室の行事や節目の参拝が行われることもあり、古い伝統が今も生きている。
神社自体が持つ信仰の空間としての役割に加え、一般の人々にとっても季節の節目や人生儀礼と結びついた場所として大切にされてきた。
天照大神が瓊瓊杵尊に授けたとされる「三種の神器(八咫鏡・草薙剣・八尺瓊勾玉)」は、単なる神話上の道具ではない。これらは古来より、天皇が天照大神の意思を受け継ぐ証しとして位置づけられてきたものである。三種の神器は歴代天皇に受け継がれてきたとされ、その継承は「神の系譜が途切れていない」ことの象徴でもある。
天皇と天照大神の関係は、日本神話に根ざした長い伝統である。神話の系譜を通じて天皇の存在意義が語られてきた歴史は、日本文化や宗教、さらには人々の精神生活にも深い影響を与えてきた。政治的な意味合いは時代とともに変化してきたが、伝統としての価値や象徴性は、現代にも確かに息づいている。
文/志水優 内外タイムス