天皇陛下の外交 家族とともに紡ぐ対話のかたち、愛子さまの「プリンセスネットワーク」にも期待
天皇陛下と皇后・雅子さまがオランダとベルギーへの公式訪問を調整中だと報じられている。6月にそれぞれの首都、アムステルダムとブリュッセルを訪問する方向で調整が進んでおり、この訪問は2002年以来、実に24年ぶりの複数国を一度に公式訪問する機会になるという。
さらに、ネット上では、長女の敬宮愛子さまの同行に期待する声が広がっている。オランダのアマリア王女やベルギーのエリザベート王女との「プリンセスネットワーク」が生まれるのではないか、といった期待も聞かれるほどだ。正式な発表はまだだが、家族ぐるみの外交への関心が高まっている。
天皇陛下が外交の場で果たしてきた役割は、現代日本が築いてきた平和国家としての歩みそのものと深く結びついている。憲法下の象徴として政治的な決定権は持たない一方で、言葉や所作を通じて日本の考え方や思いを伝える、その存在自体がひとつの外交の形だ。
昭和天皇や平成の天皇が戦後の復興や国際理解の促進に果たした役割はよく語られるように、天皇陛下の訪問一つひとつが、相手国との信頼関係を育てるきっかけになってきた。たとえばアジアや欧米の国々で行われた国賓レベルの交流では、国旗や国歌を超えて互いの文化や歴史を敬う姿勢が評価されている場面が多い。
そして、今こうしてオランダやベルギー訪問が取り沙汰されている背景には、日本と欧州との歴史的な絆(きずな)があるだけでなく、21世紀の世界が直面する課題に向き合うという意味合いも含まれているように見える。単に儀礼的な訪問という枠を超えて、平和や共生、持続可能性といった世界共通のテーマに取り組む意思表示としての外交になる可能性もある。
今回、愛子さまの同行が話題になっているのは、単純な「かわいいプリンセス」という視点だけではない。愛子さまはこれまで国内外で様々な公務を経験し、国際的な場にも顔を出すようになってきた。昨秋にはラオスでの公式訪問に参加し、国家主席を表敬訪問するなど、日本との外交関係70周年の節目に若い世代の視点を伝える役割も担っている。
令和時代に入って以降、皇室全体の公務も多様化してきた。伝統的な宮中行事や被災地訪問、国内での国民との交流に加えて、海外の文化や社会との対話も重視されるようになっている。そこに「家族」が揃って登場することが意味するのは、国の代表としての姿を見せるだけでなく、国民の生活の延長線上にある日本という国家像を、相手国の人々に伝える力だ。
この「家族ぐるみ」の外交スタイルは、堅苦しさを取り払い、人と人とのつながりを生み出す力を持っている。もちろん、訪問国での公的な行事や晩さん会に出席することはしきたりや儀礼が伴うが、それ以上に大切なのは、その場でどんな印象を残すか、どんな対話を生むかだろう。
外交というと、しばしば「トップ同士の会談」や「政策のすり合わせ」といった政治的な局面を想像しがちだ。しかし、天皇陛下の外交は、もっと柔らかく、人間味のある部分を大切にしているように思う。それは歴史を学び、文化を共有し、未来を語り合うという、時間軸の長い行為でもある。
天皇陛下自身も、これまでのさまざまな公務の中で「対話」を重視してきた。新年の所感でも、「お互いの理解を深めること」の重要性を繰り返し述べられている。 これは外交の基本に通じるメッセージだ。国家間の問題は一朝一夕に解決できるものではなく、時間をかけて信頼を積み重ねていくしかない。そうした考え方が、訪問先の人々に伝わることが何より大きい。
そして、それを日本国民がどう受け止めるかもまた重要だ。外交は政府だけの仕事ではなく、文化や人間関係の延長線上にある。天皇陛下の訪問や言葉、姿勢を通して、私たち自身がどんな価値観を大切にしていきたいのかを考えるきっかけになると、より豊かな国際交流が生まれていくのではないだろうか。
文/志水優 内外タイムス