【演芸諸行無常】二ツ目の二ツ目による二ツ目のための早朝寄席が8年ぶり復活、いきなり満員札止めの大盛況

約8年ぶりのリスタートだ。

1980年代から2018年まで、東京・上野鈴本演芸場で毎週日曜日の10時に開催されていた早朝寄席が15日に復活した。

落語界には、前座、二ツ目、真打という階級制度があるが、早朝寄席に出演できるのは二ツ目だけ。通常の寄席興行では、寄席のスタッフや前座が取り仕切るチケットのもぎりや高座返し、太鼓を叩くことなども全部自分たちが行うという、二ツ目による二ツ目のための興行だ。

開場は9時半。15日当日、9時45分に到着したが、「立ち見ですがよろしいですか」と確認され、私のすぐ後ろで、「札止めです」と声が飛び、満員御礼になった。立ち見を含めても、もうこれ以上は入れませんよ、という札止め。

1週間前の8日日曜日、早朝寄席の復活を記念したプレ公演が行われた。出演者は、五明樓玉の輔師匠、入船亭扇辰師匠、古今亭菊之丞師匠、春風亭一之輔師匠の4人。全員が落語協会(柳家さん喬会長)の理事で、翌週から始まる復活公演に向け景気づけしようという、先輩から後輩に向けた粋な計らいだ。4人は二ツ目さながら入口でチラシを配り(玉の輔、菊之丞、一之輔)、受付で木戸銭を受け取り(扇辰)、追い出し太鼓を叩き(菊之丞)と、後輩に範を示した。

プレ公演は「始発で来た人もいました。朝5時から並んでいたそうです」(関係者)という熱狂ぶりで、10時開演にもかかわらず、9時8分に札止めになった。

日本テレビ系演芸番組「笑点」の大喜利メンバーの一之輔師匠は、以前行われた早朝寄席復活記者会見の席で、「地下アイドルのような感じですかね」と、早朝寄席を例えていた。自分たちがチケットのもぎりに立つことでお客様と直接触れ合い、声をかけられたりすることも多く、お客様一人一人の顔が見える、こんなお客様に応援されているんだ、ということが手に取るように分かることを「地下アイドルのよう」と表現した。

プレ公演に続き本公演も大盛況で、立ち見を含めて約300人が詰めかけた。

演目は柳家小はだ「ろくろ首」、春風亭一花「四段目」、三遊亭萬都「巌流島」、柳家小はぜ「くしゃみ講釈」。上演時間は、10時から11時20分までで、一人当たりの持ち時間は20分ずつ。だが、3月21日に真打に昇進する小はぜの持ち時間をたっぷりと取るために、3人が時間を詰め、小はぜに30分の高座時間を渡した。

運営に慣れてきたら当然、二ツ目だけですべてを仕切る興行になるが、プレ公演、本公演初日には鈴木敦社長もかけつけ、本公演には鈴木寧会長も木戸に立ち、幸先のいいリスタートを見守っていた。

久しぶりにお目にかかった鈴木会長と立ち話をしたが、「いい二ツ目が多いので、楽しみですね」と、盛況が続く裏付けとして落語協会の二ツ目の層の厚さを指摘した。

復活に当たっては、弁財亭和泉師匠の奮闘が目を見張る。自身は真打のため早朝寄席に出ることはないが、後輩芸人のために鈴本演芸場に直訴し、落語協会幹部に掛け合うなど一肌も二肌も脱いだ。

プレ公演に続き、本公演初日にも和泉師匠は現場に駆け付け、行列の整列を担当する二ツ目に要領を伝えるなど、要となって働いていた。約8年ぶりの復活のため、入門8年以下の二ツ目は、早朝寄席がどのように運営されていたのか、当然知らない。伝統が途絶えないように、和泉師匠をはじめとした先輩真打が骨を折り、早朝寄席という資産を次世代に申し送りしているのである。

4人の二ツ目の落語が聞けて、木戸銭(入場料)は1000円。終演後、上野の街に繰り出してもまだ11時半。日曜日がまだまだたっぷりと楽しめる、朝のエンタメだ。

取材・文/渡邉寧久 内外タイムス

(左から)三遊亭萬都、弁財亭和泉、春風亭一之輔、蝶花楼桃花、鈴木敦鈴本演芸場社長

春風亭一之輔

(左から)春風亭一之輔、林家木久彦、五明樓玉の輔

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