7万8000人あっせんの風俗スカウトは優男な好青年風、涙ながらに「やっていたことは人身売買」【裁判傍聴記】

性風俗店に女性を違法に紹介したなどとして警視庁に摘発された巨大スカウトグループ「アクセス」の幹部の一人で、職業安定法違反(有害業務の紹介)罪と組織犯罪処罰法違反(犯罪収益の収受)罪に問われたS被告(31)の公判が、東京地裁で開かれた。S被告は、涙ながらに「私がやっていたことはまさしく人身売買にあたる」と後悔の念を口にした。

警視庁保安課が30年ぶりに特別捜査本部を設置し、2024~25年にかけて大々的に摘発。グループ幹部10人以上を逮捕するなど社会問題化した。アクセスはソープランドなど全国約1800店舗と契約し、SNSで勧誘した女性らを売春目的で紹介。約5年間で延べ約7万8000人をあっせんし、スカウトバック(紹介料)として約60億円を受け取っていたとされる。

S被告が25年8月に逮捕された際も、「幹部」として大きく報じられた。26年1月の公判で被告人質問に臨んだ被告は、既に保釈されており清潔そうなスーツにネクタイ姿。反社会的なグループの「幹部」というイメージとはほど遠い、むしろどこにでもいそうな“優男”風のさわやか好青年といった雰囲気だ。

大学卒業後、フィットネスクラブに就職していたが、FX投資で莫大な損害を出した。「楽に稼げる仕事を探していて、知人にアクセスを紹介してもらった」。2020年頃からアクセスでスカウト業を始めた。

アクセスはABCDと4つのグループに分かれ、被告はそのうちCグループのリーダーだったUの直属の部下として従事。スカウト行為のほか、「同じグループで部下のスカウトの子たちへの給料の送金、新しいスカウトの子への指導」などを担当していた。Cグループの財産管理を任され、信頼が厚かったようだ。

被告自身は役員報酬として月70~80万円を得ていた。「裕福な暮らしをしていたとは思います」。まさに“楽して稼げる”仕事を得て、「悪いかもしれないと思いながらも、バレないだろうと続けてしまった」と振り返った。

スカウトとしては、SNSで勧誘したり女性側から連絡が来たりした場合に、女性の希望を聞いてその希望に沿った風俗店を紹介。強引に働かせるなどしたことは強く否定したが、「ホストクラブで借金を抱えた女性は多かった。もう逃げられない状況の中で、私が女性を(風俗店で)働かせてしまったのは事実です」と神妙な表情を浮かべた。

2024年11月、事態は急転する。「アクセス」全体のリーダーだった主犯格Eが逮捕。「自分も捕まるのではと思い…家を出てホテルを転々とするようになりました」。25年に入ると、別の幹部たちも次々と逮捕されていく。

裁判官「逃げているとき、(直属上司の)Uとの連絡は」

S被告「生存確認のような連絡はしていました」

裁判官「どんな話し合いをしましたか」

S被告「(25年の)夏くらいには『そろそろ罪を償わないと』という話はしていました」

裁判官「早く警察に出頭しようとは」

S被告「考えましたが、怖さがあって負けてしまいました」

25年8月、上野駅の改札前で捜査員に「Sさんですよね」と声を掛けられ、取り囲まれて逮捕。Uも同月、警察署に出頭して逮捕された。S被告は自身が直接スカウトした女性を含む計3人を、大分や埼玉県の性風俗店に紹介したなどとして起訴された。

裁判官から「最後に何か言いたいことは」と促されたS被告は用意したメモを手に、時折涙にむせびながら次のように語った。

「自分は女性の根源を傷つけ、『仕事を紹介しているだけ』と自身を正当化していました。今振り返れば明らかな搾取であり、決して許されるものではありません。生活に困窮する女性たちに『大丈夫、稼げる』などと安易に言葉をかけ、自分は楽をしてお金を受け取っていた。人の痛みに無関心でした。社会に復帰したら、どんな仕事でも誠実に汗を流し、胸を張って生きていきたい。取り返しのつかないことをしてしまい、反省の言葉だけでは済みません。過去の自分とは決別し、社会の一員として生きていくことを固く誓います」

検察側の懲役4年、罰金150万円の求刑に対し、東京地裁は2月の公判で執行猶予5年が付いた懲役2年6月、罰金150万円の判決を言い渡した。莫大な借金故に、悪の道に手を染めてしまったS被告。法廷での声を震わせながらの誓いに嘘はないと信じたい。

文/篠田哉 内外タイムス

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