衆院選で“勝ちすぎた”高市首相を待ち受ける新たな3つの壁とは

事前の各社の情勢調査以上に自民が大勝した衆院選。自民単独で3分の2以上という結果に高市早苗首相も「ホクホク」かと思いきや、意外にもその後の記者会見などではさほど笑顔が見られない。

その背景には、「国民から浮かれていると見られないように」という気持ちだけでなく、困難が待ち構えているということもあるのかもしれない。

まず高市首相にとって新たな課題となったのは、衆院で316議席に増えた自民党のグリップだ。単独で衆院定数の3分の2を獲得するのは、戦後初。それだけ異例の規模となったうえに、現在は麻生派以外の派閥は解散している。

「かつては首相が派閥の領袖に気を遣い、議員が派閥ごとにまとまってくれれば、人材育成もできたし、統制もとれました。派閥の領袖に根回しをしていれば、議員たちも首相の方針におとなしく従ってくれたのです。派閥がほぼなくなったうえに新人議員も多いとなると、党内の人間関係や議員の意向も掌握しづらくなります。議員が増え、ポストからこぼれる人が多くなると、不満がたまる原因にもなります」(自民関係者)

ただでさえこれまで無派閥で、党内に仲間が少ないと評されてきた高市首相にとって、これほど巨大な党のグリップは簡単ではないというのだ。

次に、維新との関係も新たな局面を迎えそうだ。自民だけで3分の2を確保できたため、参院で否決された法案の再可決が自民単独で可能となった。もちろん、そう何度も衆院での再可決をするわけにはいかないが、理論上は維新が連立政権にいなくても政権運営が可能になったわけだ。

衆院選を経て自民の議席数が維新の9倍近くと圧倒的な差が生まれたこともあり、維新の求める衆院定数削減に反対する自民議員の声が大きくなると、定数削減がさらに困難になる可能性もある。高市首相がこれまで以上に自民と維新の板挟み状態に苦しむことになりそうだ。

そして高市首相を困らせる新たな火種が、憲法改正を求める機運だ。憲法改正には衆参両院の3分の2以上の議員による発議と国民投票が必要だが、今回、衆院だけとはいえ3分の2を獲得したことで、保守派からは早くも憲法改正の議論を求める声も上がる。

ただ、憲法改正は長期政権を築いていた安倍晋三元首相でも実現できなかった難題だ。

「ことあるごとに憲法改正に言及していた安倍首相も、非公式の場では『大阪都構想の住民投票を見ても分かるように、住民投票で一度否決されると政治的エネルギーを大きく削がれる』と話し、憲法改正の国民投票には挑戦しようとしませんでした」(安倍氏周辺)

これまでなら高市首相は、憲法改正議論などタカ派色の強い政策議論を進められなくても、少数与党のため政策実現へのハードルがあることを理由に一定の理解を得られていた。だが今後は自身の支持層である保守派や党内に対して、いわばそうした『言い訳』が使いづらくなるのだ。

今は支持率が高く、選挙にも勝利し党内でも求心力のある高市首相。だが、政治の一寸先は闇。支持率が今後も維持される保証はない。今後も大幅に増えた自民議員を掌握し、自身の支持層をつなぎとめ、政権運営を続けられるか。

文/中村まほ 内外タイムス

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