【福田淳の対談闊歩】田原総一朗 後編 炎上は大歓迎、91歳のファイティング哲学 「朝生」本番中に最期を迎えたい
前編では「激論!クロスファイア」の打ち切りなどについて語った田原氏。後編の今回は「親しくない」という高市首相が挑む衆議院選挙の予想、世界各国が頭を抱えるトランプ大統領など国内外の政治について意見を深める。また、卒寿を超え自身の死生観についても吐露した。
(前編「三流局の役割がある」と反骨貫いたテレ東時代 「激論!クロスファイア」打ち切りに初言及)https://naigaitimes.com/society/342411/
福田 長年ジャーナリストとして日本の政治を見てきた田原さんにお聞きしたいのですが、目前に控えた衆議院選挙で自民党は勝つと思いますか?
田原 たぶん勝つと思う。自民党に文句を言いたい野党はたくさんあるけど、やっぱり自民党主導の中で文句を言いたいんだよ。自民党に勝とうという気概のあるやつ(野党)はいないよ。
福田 では、高市首相のもと自民党の単独過半数の獲得は可能でしょうか?
田原 獲る可能性はあるね。高市さんのやっていることは賛否両論あるけれど、筋は一貫している。それは「日本を強い国にしたい」ということ。そこが若者にも受けるんでしょうね。高市首相になったことで「日本は右傾化する」なんて言われているけど、高市さんのことが嫌いな人間が文句を言っているだけ。
福田 有権者は「高市さんは好きだけど、自民党は嫌い」という傾向が強いようです。仮に今回の衆議院選挙で自民党が勝ったとしたら、高市首相の長期政権となりますかね?
田原 それは分かんない。僕はそんなに親しいわけじゃないからさ。
福田 何か因縁めいたものを感じますよ。一方で海外に目を向けると、暴れん坊のトランプ大統領がやりたい放題をやっていますね。高市首相とは親密な関係を構築しているように見えますが、日米関係についてどのようにお考えですか。
田原 今の日本は「これからどうなっていくのだろうか」と見守っている状態。この日本の距離感っていうのは、アメリカに「合う」「合わない」ではなく、「合わせないと何もできない」という状態で、とりあえずトランプの政策を容認すること以外ないんだよね。反トランプだったら何もできない。やっぱりけんかするよりは、トランプに合わせた方が物事は前に進むということなんです。
福田 日本だけでなく世界中がトランプ大統領に翻弄されていますね。
田原 デモクラシー(民主主義)っていう言葉がありますね。政府は国民の判断をどのようにして汲み取るのか。これが難しいんですよ。デモクラシーだけでは時代を変えられない。それを知っているトランプは、強引に反デモクラシーを使っている。トランプの政策は反デモクラシーで、その反デモクラシーをアメリカの多くの人々が肯定し始めている。
福田 なるほど、しばらくはトランプ大統領には悩まされそうですね。あと、長年テレビ業界に携わってきた田原さんとメディアについても話したかったんです。今はテレビにとって代わり、ネット隆盛の時代となりましたね。
田原 テレビがネットに押されているから面白い。テレビ業界の人間は現状を何とかしなければならないと危機感を持っている。だから、みんなで一致団結して行動しやすい。僕なんかは反ネット的な発言ばかりしている。
福田 最初は反テレビ派で、今は反ネット派なんですね。こんなこと言うとおかしいってよく言われるんですが、僕はもうYouTubeは終わると思っているんです。YouTubeのコメント欄がすごく荒れているんですよね。
田原 僕はネットでね、僕のアンチがいたら言い返してやる。それでけんかになって、けんかになればなるほど、ネットでみんなが見てくれる。結局はネットに貢献してしまっているかもしれないね。
「この老害とけんかして勝てるのかって聞きたいね」(田原)
福田 田原さんが出演したYouTube動画は何十万回も再生されて、賛否両論あってみなさん非常に関心が高い。中にはコメント欄で田原さんのことを「老害」なんてひどいことを言う人もいますよね。正直、どう思っています?
田原 でも自分で自分のことを老害だって言っているから。ただ、僕は老害なんだけど、この老害とけんかして勝てるだけの理論を持ち合わせているのかって聞きたいね。
福田 そのファイティングポーズが格好いい。
田原 “ファイティング”が面白いんだよ。幼少の頃は自由にものが言えなかった。自由にものを言うと必ずけんかになる。僕はそのけんかも面白いと思う。だからネットで炎上したからって自分から“一発退場”してしまうのはよくない。3回、4回の炎上がどうしたっていうこと。僕は炎上すれば「ありがたい、ありがたい」っていつも思ってる。炎上は大歓迎です。
福田 僕みたいにちょっと悪口言われたら落ち込んだりするような人ではダメですね。今、「Podcast」をやっているんですが、Podcastはラジオの延長線上にあって、番組パーソナリティーの本当のファンが自発的に聴きに来る。いわゆる「濃い人」ですね。だから、そこで起こる議論が「イエス」であろうが「ノー」であろうが、それは価値ある議論だと思うんです。
田原 なるほど。そうやって新しい仕事も生まれるわけですね。だからメディアは面白い。
福田 いつまでも仕事を楽しんでいますね、田原さんは。今の現役サラリーマンは昔に比べて元気がないように見えるのですが、どうしたら田原さんの“スピリッツ”を注入することができますかね?
田原 企業がだんだんと成長してきて、一律に「かくあるべし」という風潮になってきたのがよくないね。企業の中で反発するサラリーマンは出世できないから、その「かくあるべし」を受け入れざるを得ない。だから企業から出ていく人が増えてきたんだよね。
福田 だけど、現役世代は老後の心配なんかもあって大変なんですよ。田原さんは生涯現役。田原さんに老後はない。
田原 だって好きなことやってるんだから。今の状況が老後を作るから、今、自分が好きなことをやっていれば、ちゃんとした老後がやってきますよ。僕はずっと働き続けて、死ねればそれでいいと思っている。
福田 「朝生」の本番中に眠ったように亡くなりたいっておっしゃっていましたよね。
田原 うん、それは今も変わらない。だから「朝生」はこれからも続けたい。番組プロデューサーも続けたいと言ってくれています。
福田 まさに「あしたのジョー」のラストシーン。この対談を見て「ノー」と言う人が多くなればいいですね。
田原 とにかく言いたいことを言った方がいい。炎上するから面白い。それが周りに刺激を与えるからね。読者のみなさんも頑張ってください。
《プロフィール》
田原総一朗(たはら・そういちろう)1934年滋賀県生まれ。 60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。 64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。 77年にフリーとなる。「朝まで生テレビ!」「サンデープロジェクト」(テレビ朝日系)、「激論!クロスファイア」(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数。著書に「日本の戦争」(小学館)、「塀の上を走れ 田原総一朗自伝」(講談社)、「誰もが書かなかった日本の戦争」(ポプラ社)、「全身シャーナリスト」(集英社新書)、「最後の世代」(三省堂)など。
内外タイムス公式YouTubeより