選挙期間中は“バブル”、2週間で100万円稼げる…SNS選挙でデマと誹謗中傷が過激化

自民党が圧勝した今回の衆議院選挙、テレビの街角インタビューを見るとネット動画に影響されて自民党に投票した人が多いことがわかる。選挙戦では高市早苗首相(自民党総裁)が登場するPR動画が再生回数1億回を突破し、大きな話題となった。14日放送のTBS系「報道特集」がその実態をレポートした。

自民党が1月26日にYouTubeに高市首相のメッセージ動画を投稿すると、公開初日は2万4783回だったが、公示日には一挙に500万回を超え、2月3日に1億回を突破した。そして、投開票前日に1.6億回を超えた。前回の衆院選では2200万回だったので、桁違いの伸び率である。

異例の再生回数の背景に何があるのか。選挙分析などを行うJX通信社の米重克洋代表は「広告によって再生回数を増やした可能性が極めて高い」と話す。高市氏の動画は有料広告としても配信され、他の動画を再生した際に自動的に流れていたのである。

注目すべきは視聴者のリアクションを示す「いいね」の数3.9万回である。再生回数が1.6億回なので、「いいね率」はわずか0.02%に過ぎない。米重代表は「再生回数の分母(1.6億回)はかなり広告によって増えていることを示唆している」と分析する。

ネット広告は地域や対象を絞り込むターゲティングができるのが強みで、自民党だけでなく各政治団体がネット広告を使っている。広告料は再生1回につき2~10円といわれ、自民党が莫大なネット広告費を使っているのは容易に想像できるが、その総額は政治資金収支報告書を見てもわからない。

高市氏動画の再生回数が増え続けた要因は、自民党の公式動画だけではない。YouTuberが編集したいわゆる「切り抜き動画」もたくさん見られていた。ある政治系YouTuberは「収益目的のチャンネルは信条というより儲かるところを追いかけていく」といい、「(内容が)極端な動画が多い。あいまいな意見は埋もれていってしまうので」と指摘する。

今回の衆院選で言えば、高市人気に群がった構図だ。この政治系YouTuberはさらに「選挙期間中は政治チャンネルにとって“バブル”。2週間で100万円は普通に稼げる。参院選は参政党や国民民主党などに人気が分散していたが、今回は完全に『高市さん・自民党』がはっきりしていた」と話す。

高市氏を“推す”だけならいいが、問題なのは野党候補やその家族までも誹謗(ひぼう)中傷する内容の動画が増えたことだ。中道改革連合の岡田克也氏は敗戦の弁として「ネットのデマや批判に対応できなかった。日本の将来が怖い」と語る。

岡田氏はネット上で“中国のスパイ”と批判され、悪質な生成AIも出回った。また、家族も標的にされた。岡田氏は「高市さんに厳しく質疑すると影響を受けるとなると、国会審議そのものが死んでしまう」と危惧する。

選挙ドットコムの伊藤由佳莉副編集長はSNSの収益構造と誹謗中傷・デマが生まれる状況について、「YouTubeの言論空間自体が保守的なコンテンツが伸びやすいという傾向があるのが大きい」と理由を語った。

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