社長逮捕の退職代行「モームリ」は何が違法なのか、弁護士検索サイトとの違いは
退職代行サービス「モームリ」の運営会社社長らが3日、弁護士法(72条)違反の疑いで逮捕された。
モームリが集めた顧客を弁護士へ紹介し、その見返りとして弁護士から紹介料を受け取っていたと報じられている。
モームリについては、勤め先に退職を伝える際に退職代行を使うことが労使関係上適切かどうか、利用した場合に退職後の転職活動に影響があるか、若者が退職代行を使わざるを得ないとすればその会社や社会に問題がないのかなどの議論を呼び大きな話題となった。
弁護士法上の問題点としては、①弁護士から事件のあっせんの対価として紹介料を受け取ること、②弁護士資格のないモームリが弁護士業務を行っているかどうか(非弁行為の有無)が問題となっている。
紹介料の授受により弁護士の独立性が害されるリスクも
一般社会において、紹介料のやりとり自体は様々な場面で見られるもので禁止されていないが、なぜ弁護士法は禁止しているのか。
昭和46年7月14日最高裁判決(弁護士法違反被告事件)では、次のとおり示されている。
「弁護士は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とし、ひろく法律事務を行なうことをその職務とするものであつて、そのために弁護士法には厳格な資格要件が設けられ、かつ、その職務の誠実適正な遂行のため必要な規律に服すべきものとされるなど、諸般の措置が講ぜられている」
「資格もなく、なんらの規律にも服しない者が、みずからの利益のため、みだりに他人の法律事件に介入することを業とするような例もないではなく、これを放置するときは、当事者その他の関係人らの利益をそこね、法律生活の公正かつ円滑ないとなみを妨げ、ひいては法律秩序を害することになるので、同条は、かかる行為を禁圧するために設けられたものと考えられるのである」
様々なケースが考えられるため抽象的な表現となっているが、端的にいうと、資格のない者が法律事務に介入(紹介・あっせんを含む)すると、自分の利益を図るなどして当事者の利益を損なう恐れがあるからということだ。
また、弁護士には適正な業務遂行にあたって、独立性が必要であり、弁護士自治などで一定の独立性が保障されている。ところが、事件の紹介について紹介料の授受(報酬分配)が行われると、報酬分配をきっかけに弁護士の独立性が害され、事件処理が適正に行われない恐れが出てくる。
非弁行為かどうかは実質判断
弁護士法72条に違反かどうかは、表向きの態様だけでなく、目的や背景事情などケースごとに実質的に判断されることになる。
こうした調査・判断は、捜査機関、弁護士会が行い、最終的には、裁判所に委ねられる。
ちなみに、前述の最高裁判決では、「たまたま、縁故者が紛争解決に関与するとか、知人のため好意で弁護士を紹介するとか、社会生活上当然の相互扶助的協力をもって目すべき行為までも取締りの対象とするものではない」と付言されており、知り合いに弁護士を好意で紹介することまで違法とされるわけではない。
弁護士が紹介料を支払ってまであっせんを受ける背景
相談希望者が弁護士を検索するタイプの弁護士検索サイトや集客サイトが存在する。
こうした弁護士検索サイト等では、相談希望者が弁護士を検索し、運営業者が弁護士から利用料・広告料等を受け取っている(弁護士が有料会員の場合)ことがあるが、これは紹介料の授受にあたらないのか。
これらについても実質判断で、運営業者が問い合わせの中身に関与せず、検索結果に運営業者の恣意が入らず、売り上げが成果報酬でもない(問い合わせ数や受任数に連動しない)のであれば、事件のあっせんを行っているとはいえず、紹介料の授受とは言えないとされている。
例えば、資格を取って間もなかったり、独立したばかりであったり既存顧客を持たない弁護士にとっては、集客のコストや労力を軽減できたり、単純化したりできそうに見えるということがあげられる。
また、安定的に案件が供給されることが安定志向のある弁護士には魅力的に思えることもあるだろう。
そして、上記のとおり、非弁行為・提携にあたるかどうかは実質判断ということもあり、モームリのような新たなタイプの事業が急速に広まった当初は、違法かどうか明確でないという事情もあると思われる。
モームリの件では弁護士も書類送検されている一方、運営会社社長は容疑を否認しているとのことであり、今後の進展に注目したい。
文/竹村公利 内外タイムス