消費税減税は財源論で実現可能性は不透明 税率を下げても戻すには大変なエネルギーが必要
衆院選で戦後初めて自民党単独で3分の2超の議席を獲得した。示された民意の先は何か、9日放送のNHK「クローズアップ現代」で専門家らが展望した。
まず、今回の自民党の勝因について、東京大学の御厨貴名誉教授(日本政治)は「高市首相が選挙の構図を『私か否か』と設定し、初めて事実上の“首相公選”となった」とし、その上で「今後ますます人を選ぶ選挙になるだろう。女性総理の勝利は日本に自信を与えたように見える」と語る。
では、選挙公約の「積極財政」と「強い外交」を高市早苗首相はどう実行していくのか。高市内閣が昨年設置した「日本成長戦略会議」のメンバーの1人、エコノミストの会田卓司氏はこう話す。
「官民連携の投資拡大で労働生産性を上げたり、GDPを拡大していく力になり、強い供給能力にもなる。これが国民の実質賃金の上昇につながる力になっていく。食料品の消費減税は、家計の負担を軽減して家計を支えるために必要。その財源は5兆円と言われる。今年の税収増加は6兆円程度。この6兆円は名目GDPが拡大している限り恒久財源になるので(減税分は)賄える」
一方、一橋大学の佐藤主光教授は「将来的には財政赤字の帳尻をどこで合わせるかというと、社会保障関係であれば社会保険料だし、その他のものは増税だ。財政状況が悪くなれば、海外投資家を中心に国債を売るので金利が上昇するし、日本経済への不安感で円安になる」と財政拡大の危険性を指摘。
NHK政治部の小嶋章史記者は「消費税を一旦下げて再び上げることはできるのかという声がある」と指摘する。
外交について東京大学大学院の鈴木一人教授(国際政治)は日米関係について「(トランプ大統領の)高市首相への信頼が高まる。対米投資をどう進めていくかがカギ」と話し、悪化する日中関係については「中国国内の経済状況が悪いので、すぐに拳を下ろせないものの関係改善を模索する可能性もある」とした。
小嶋記者は「政権基盤が安定すれば積極的な外交が可能になるが、政府内には今回の衆院選勝利で日中関係が劇的に改善するとの見通しはない。11月のAPEC首脳会議までに日中首脳会談ができる環境ができるかどうか」と年内の見通しを語る。
この他、自民党公約の「議員定数の削減」はもともと、連立を組んでいる日本維新の会の主張で入れられたものだが、連立の枠組みを維持している以上、今後も議論はしていくのだろう。
そして、高市首相が記者会見でも「挑戦していく」と言及したのが憲法改正。発議するには衆参各院の3分の2以上の賛成が必要とされるが、参議院で自民党は少数与党だ。しかし、“改憲勢力”と見られる参政党や日本保守党、国民民主党まで巻き込めれば3分の2に達する。「安倍晋三元首相の愛弟子」を自認する高市首相だけに、本当に実現したいのは憲法改正ではないのかと見る向きは少なくない。