トランプ大統領の暴走を止められるのは「米最高裁」「マーケット」「米議会」の3つ

米トランプ大統領は世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)で、デンマーク自治領グリーンランドの領有をめぐり、「武力は使わない」と演説した。また、ヨーロッパ8カ国に対する追加関税も取り止めると表明した。朝令暮改ともいえるこの決定の陰に何があったのか、22日放送のテレビ東京系「ワールドビジネスサテライト」はダボス会議でのトランプ演説について取材した。

双日総合研究所シニアフェローの吉崎達彦氏はトランプ大統領の翻意について次のように説明した。
「前日のトリプル安が効いた。トランプ氏は本能的なリスク回避能力があって、まずいと思ったら意固地にならないで引く。マーケットはTACO(Trump Always Chickens Out =トランプはいつもビビって引っ込める)だと思って安心するパターン」

トリプル安とは、トランプ大統領がグリーンランド領有に反対する欧州8カ国への追加関税を表明して、株(NYダウ)だけでなく、国債(債券市場)やドル(為替市場)も売られたことを指す。これはマーケットが政策に「ノー」を突きつけたということだ。

トランプ大統領はこのトリプル安に関して演説の中で「昨日アイスランドのせいでアメリカの株式市場は落ち込んだ。すでにアイスランドには多額の金をつぎ込んでいる」と発言。“グリーンランド”を独立国家である“アイスランド”と何度も言い間違えた。さらに、演説の大半は大統領就任1年での成果をPRするような内容ばかりで、会議参加者らには不快なものだったという。

ダボス会議の開催地であるスイスに対しては「スイスの時計産業は関税で破壊できる」と放言。仏マクロン大統領をこき下ろすような発言まで飛び出した。それでも会議に参加したエリートらはブーイングもせず黙って聞いていたという。

欧州側はトランプ大統領に気持ちよくしゃべらせて“実利を取る”作戦だったようだ。ただ、トランプ大統領はグリーンランド領有への野心を捨ててはおらず、今回のダボス会議で米欧の亀裂は決定的になったといえる。

吉崎氏は、トランプ大統領の暴走を止められるのは「米最高裁」「マーケット」「米議会」の3つでこの順番だと指摘する。

「アメリカは厳格な三権分立なので大統領府を裁判所と議会が監視する。ただ、司法は外交と安保には立ち入らないという原則もある。現在、トランプ関税を巡る訴訟で最高裁の判決待ちになっているが、欧州への関税を言い出したのは、この判決を遅らせる狙いがあったのかもしれない」(吉崎氏)

11月の中間選挙で民主党が勝って議会で過半数を取れば、吉崎氏が3番目とした「米議会」がもっと強力に監視できるようになるだろう。

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