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「そんなに私の裸が見たいんか!」叫ぶおばあちゃんも――クレイジーでおもろい獄中者

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 毎日暑いですね。今はムショもだいぶ建て替えられていて、室温の管理も昔ほどひどくはないようです。でも、やっぱりキンキンにエアコンが効いているわけではないので、体調管理は大変です。それに、暑いとか寒いとかだけではなく、もともと閉鎖された空間にいるので、言動がおかしくなる人も多いです。こんな状態で「罪を反省しろ」と言われてもムリですから、再犯者がいなくならないのだと思います。

■電柱がおまわりさんに見えたり、虫に襲われたり

 獄中でおかしくなる原因は、拘禁障害というノイローゼの一種か、シャバにいた頃のドラッグの後遺症なのか、判断は難しいですね。 急に大声を出したり、バッグの中の荷物から出し入れを繰り返したりする人は珍しくありませんでした。

 たとえばドラッグの後遺症でありがちなのは、「なんでも『人』に見える」とか「たくさんの虫が這ってくるように見える」、あとは「モノがしゃべる」とかいうのですね。私は塀の中では大丈夫でしたが、シャブをやってた頃は、電柱がおまわりさんに見えて外に出られなかったり、タバコを吸う時にマッチ棒が立ち上がって話しかけてきたりしてました。もちろん今はないですよ(笑)。

 ほかにも、一日中、鳩時計の時報をマネして「ぽっぽー、ぽっぽー」と言わはる人、鉛筆でもペンでも注射器に見えるらしく、血が出るまで腕に刺す人なんかもいてはりました。それから、ムショの食事は遅くても10分で食べなくてはならないのに、「味噌汁に虫がいる」と、器をじーっと見る人もいてました。本来ならヘタしたら懲罰ですが、頭が壊れてるのがわかってるので、誰も何も言いません。

 脳が壊れてるエピソードでいちばん印象に残っているのは、和歌山刑務所で一緒だった在日のKさんです。私が収監されていた当時ですでに70代だったと思いますが、とにかくエロに執着してはりました。刑務所を出たり入ったりで、最近獄死されたと聞いています。

 Kさんは、常に騒いでいる印象で、男性の先生(刑務官をこう呼びます)には「また私をそんな目で見たな! 抱きたいんやろ!?」と怒鳴り、女性の先生には「オメ○したいんやろ!?」と叫び、同房の若いコには「ブス!」「腐れオメ○!」と罵倒します。

 いま思えば、ごっつ体力ありますよね。そういえばよくストレッチや腹筋運動もしたはりました。そして、夏は「そんなに私の水着姿が見たいんか!? ほなら見せたるわ!」と、誰も頼んでへんのにパンツ一丁になり、庭の溜池に飛び込んでました。

 さらに、夏場の工場作業用の制服のスカートを、ウエストの部分を折り込んでいるのか、膝上15センチくらいまで上げていました。ボールペンでアイラインを引いたりもしたはりましたね。もうおばあちゃんですし、先生たちも苦笑するだけで怒りません。私がやったら、間違いなく懲罰ですけどね。

 ヘタな芸人よりよっぽどおもろいので、私たちはよく笑って見ていました。Kさんとはもう会えないのですが、久しぶりに当時の仲間とKさんについて語りたくなりました。

nakanorumi15中野瑠美(なかの・るみ
1972年大阪・堺市生まれ。特技は料理。趣味はジェットスキーとゴルフ。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)や『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)などへの出演でも注目を集める。経営するラウンジ「祭(まつり)

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